Vol.158

3.11とクリエイティブ

立ち上がったクリエイター Topics

「復興に向けて、クリエイティブな力が今できることとは何か?」3.11後に立ち上がった各界のクリエイターたちが、多くの心、有志を巻き込みながら実現するプロジェクトの今をまとめた。




LIFE311 by more trees


「東北の森」で失われたLIFEを再生する。

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森林再生事業のプラットフォームとして様々な活動を展開するmore trees(モア・トゥリーズ)が、3.11後の震災復興をテーマに提案するのは、東北の森のリソースを活用しながら、被災地に暮らす人たちと共に作り、新しい雇用を生み出す『LIFE311』という名のプロジェクト。東北の森から供給される森林資源(間伐材)や被災地周辺の地域産材を主に活用してつくる、木造仮設住宅による復興支援プロジェクトだ。

more treesは今回、津波被災地の近隣自治体を中心に地域と連携。適切に管理された森林からの地場産材を活用した仮設住宅を地域の人々と建設することで、地域経済の活性化とともに、サスティナブルな森林保全を促進する。これは同時に、支援金を国内で活用・循環させられる持続可能なプロジェクトとしての可能性も秘めている。


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建設地に選ばれたのは、「森林・林業 日本一」を目指す自治体としてFSC(森林認証)も取得している岩手県住田町。震災で大きな災害を被った陸前高田市、大船渡市、釜石市に隣接するこの町を拠点に、東北の資源で「働」を生み、「住」をつくり、失われた「LIFE(生活)」を再生する。滞っていた自然の循環を促すことで生まれたひとつの“和”をどれだけ大きく潤滑なものにできるか。“再生”をテーマに様々な成功例を生み出してきたmore treesの手腕にかかっている。

http://life311.more-trees.org/




Good Design Award 2011


日本のグッドデザインが変わる?

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3.11以降、日本人のモノに対する価値観は大きく変化した。言うまでもなく、デザインに対する価値観も大きな転換期を迎えたことを誰もが肌で感じている。そんな折に、2011年度グッドデザイン賞の一般公募が行われた。

「デザインは、常に『適正』という美の軸を中心に揺れています。そして今は『適正』だと思い込んでいた軸の位置を、大きくシフトしなければならない時期かもしれません(公式HPより一部抜粋)」。今年度の審査方針を示唆した審査委員長・深澤直人氏のメッセージにも注目が集まっている。未曾有の大震災を経験した日本人の“新たな価値観”に対して、デザインがどのようなクオリティを提示できるのか? 50年以上の歴史を誇る日本を代表するデザイン賞の審査も、1957年の創設以来経験したことのない大きな転換期を迎えることになる。

今年、復興支援のための特別措置として、東北6県と茨城県に本社を置く応募者においては応募要領に定められているすべての費用を免除している。これは、被災地でものづくりやデザインに関わる人々からより多くのエントリーを募ることで、現地で新たなビジネスチャンスが生まれ、さらには被災地における雇用の促進に繋げるための産業再生支援策のひとつでもある。新たなジャパンクオリティを生み出すプラットフォームとして、グッドデザイン賞の新たな動向に期待したい。

http://www.g-mark.org/gda/2011/




わののわ(うつわのチカラのわ)


うつわには特別な力がある

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クラフトバイヤーとして活躍する日野明子さんを中心に立ち上がった「うつわのちからのわ」をテーマにした復興支援プロジェクト。『わののわ』は、日野さんの友人が、仙台で被災した(後に同プロジェクトの実行委員となる)岩井博美さんから受け取った1通のメールをきっかけにスタートした。

「被災地では、うつわのことどころではない日々が続いていたことは確かです。しかし本当に『うつわどころではない』と切り捨ててしまってよいのだろうか?という疑問が湧きました。(…中略)馴染みのない街で避難生活をする中、自分専用のうつわがあるだけで心がほっとするのはなぜなのでしょう。…どうやら、うつわには特別な力があるらしい。うつわの力で被災した人を元気にできないだろうか。うつわによって気持ちが救われる人もたくさんいるのではないだろうか」 被災地の皆さんに“うつわが持つ特別な力”を届けたい、感じてもらいたい。日野さんの呼びかけに全国から多くの作家やショップが共鳴し、6月18日〜19日には仙台市で「第0回(準備号)/杜の都のうつわのチカラのわ」が開催され、2日間で約300人ものうつわ好きが来場した。『わののわ』は今後もさらなる賛同者(うつわをつかう人、作る人、つなげる人)を募りつつ、仙台を拠点に有志によるうつわの販売会を開催する継続的なプロジェクトとして、展開していく予定だ。

http://wanonowa.net/




F+


日々の買い物を「+支援」に繋げる和の仕組み

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「F」は「ふるさと」「復興」の頭文字。「+」は復興以上の成果を目指す意思表示。『F+』 は、“日々の買い物”を起点に、消費者・企業・現地支援団体・支援を必要とする被災地の人々をまっすぐに結ぶ継続的な復興支援プロジェクトとして、2011年6月1日に本格始動した。発起人は、デザインディレクター・立川裕大氏と、一般社団法人震災復興リーダー育成支援プラットフォーム代表・渡辺一馬氏。「既存の商品に『F+』ブランドを付けることで寄付金が計上され復興支援ができる」という、日常のショッピングをベースとするシンプルな仕組みを軸に運営されるこのプロジェクトは、各ジャンル30人以上のプロフェッショナルたちの有志(ボランティア)に支えられて実現している。

参加企業は商品と寄付の割合(販売価格に対する%)、支援したい対象(子ども、女性、高齢者・障がい者、食の生産者、伝統工芸)を決定し、サイトから自由にエントリーできる。なお、寄付や支援の成果は同じくサイトおよびメールニュースで随時報告される。既に「ポーターズペイント」「イデア」「a.flat」「FUGA」「能作」「アッシュコンセプト」といったデザイン・ライフスタイル系のメーカーおよび企業が参画。今後はアパレル、食品などの分野も含め、幅広く長期的に活動を展開する予定だ。

http://www.fplusproject.org




リビルド益子/カケラプロジェクト


“カケラ”の力で益子の町を再生する。

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江戸時代からやきものの一大産地として知られる栃木県益子町も、3.11の地震によって登り窯の9割が損傷・損壊し、大量の作品も破損。甚大な被害を受けた被災地のひとつである。一時、臨時に設けられた産廃集積所には大量の割れた陶器のかけらが、見るも無惨な姿で山のように積み上げられていたという。『リビルド益子』は、まさにそんななか、益子を拠点に活動する若手陶芸家達が「かけらを何とか生かせないか?」とTwitterに書き込んだことをきっかけに立ち上がったプロジェクトだ。

その活動は大きく分けてふたつ。どちらも活動に賛同する作陶家たちから集めた「震災で割れてしまった陶器のカケラたち」が主役だ。ひとつめの『旅するカケラ』は、集められたカケラがプロジェクトに賛同する各地のギャラリーやショップを巡り、出会った人々に「益子の復興」への想いを描き寄せてもらうという試み。カケラをきっかけに、各地の人々と益子の繋がりを深めていくことを目的としている。旅を終えたカケラ(メッセージが書き込まれたカケラ)は今後町内に展示され、最終的にはモザイクタイルとして益子の町に残す計画を進めていくという。

ふたつめは、カケラと他分野のアーティスト、クリエイターとを結ぶ取り組み。カケラが様々な作家と出会うことで、アクセサリーやガラス製品など新しい作品として再生されるというものだ。カケラを生まれ変わらせることで、人と人、心と心を繋ぎ、益子をRe-build(再生)させる『リビルド益子』のプロジェクトは、地元と全国の有志にささえられながら継続される予定だ。

http://rebuild.exblog.jp/




MY FAVORITE


“クリエイティブな力を「情報の財産」で支援する

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被災地で活動中止を余儀なくされているクリエイターたちの創作活動をサポートするために「情報の財産の共有」をテーマに立ち上がったプロジェクト。発起人の小町渉氏(アーティスト)、木村浩一郎氏(デザイナー)、デイリープレス(アタッシュドプレス)の呼びかけに賛同した各界で活躍するアーティストやデザイナー、クリエイティブな活動を展開・支える人々が、アート、ファッション、デザイン、グラフィック、建築など、自らの制作活動にインスピレーションを与えてきたお気に入りの本や雑誌を寄贈。仙台市のコンテンポラリーインテリアショップ「international」の一角に『MY FAVORITE(マイ・フェイバリット)』と題したスペシャルなブックコーナーを設け、寄贈された資料の自由な閲覧を可能にした。

今では賛同者も20名を上回り、寄贈本も相当数にのぼっている。今後はより多くの人の利用が可能になるよう、仙台市のサポートでさらにパブリックなスペースでの設置を予定している。

お問い合わせ:デイリープレス(川村) tel. 03-5771-7277



取材/松浦明