


−ポール・スミスさんは若い作家を支援するスカラシップも行っていますよね?
ポール・スミス
スレードスクールと、ロイヤルアートオブアカデミーでは、10年前からスカラシップを行っていて、優秀な生徒に対して奨学金などの援助を行っています。今回、出展したルーク・コーフィールドも、スレードスクールの生徒でした。
−若い世代の作家たちから、刺激を受けることはありますか?
ポール・スミス
今回、ショップの1階に展示したコナー・ハリントンは、街でたまたま見つけて驚かされたアーティスト。彼はまったくの無名で、ロンドンのブリックレーンという若い人たちが住むエリアの屋外のゲートに絵を描いていました。通りがかりに見つけてすごく気に入って、本人に声をかけたんです。そうしたら後からキャンバスに描いてプレゼントしてくれました。彼は写実的に描くテクニックを持っていて、背景に英国の伝統をリアルに描きながら、そこに引き裂いたようなモチーフを加えているんですね。ちょっとパンクな感じですよね。そこに自分にも似たスピリットを感じたんです。アートはどこにでも、街なかにも転がっているものです。
−ファッションデザインが、アートにインスパイアされることはありますか?
ポール・スミス
以前、スリム・アーロンズの写真に影響を受けたことがあります。彼の作品というより、彼の写真のなかに登場しているモデルたちのスタイルが面白くて。いわゆるセレブな生活をしている、パームビーチとか、そういうところにいってゴージャスな生活をしている人たちの服装がユニークで、09SSのウィメンズコレクションにも反映されています。

−ブルース・ウェーバーとはコラボレーションも行われたそうですね?
ポール・スミス
ブルース自身とは個人的にも仲が良くて。以前、イタリアンヴォーグのためのプロジェクトを一緒に行ったことがあります。今回出展した作品もそのときのものです。彼のアートワークをプリントして、オリジナルでTシャツを作ったりもしました。
−ファッションもまたアートとするなら、ポールさん自身もアーティストなのでは?
ポール・スミス
私はファッションデザイナーでありながら、絵が上手に描けないんですけれどね(笑)。彼ら芸術家たちのスキルが、うらやましいと思います。私はどちらかというとデザイン画をおこして服にするというタイプではなく、直接パタンナーなどに言葉でイメージを伝えながら服にしていく。けれどもアーティストにはいろいろなタイプがあります。あるアーティストはスキルがあり、また別のアーティストはアイデアがありそれをオーガナイズする。いずれもどう時代を反映させるのかが、面白いと思うんです。ファッションもデザインは大事。一つの服を作るのに、まず素材を見つける、技術を生かす、イメージを作る。そうやってオーガナイズすることも大事。それでいいデザインが出来上がります。そして出来上がった服は、それを着る一人一人にとって、一着のアートとなるように。
構成・文/東ミチヨ、撮影/根田拓也