Monthly INTERVIEW トップランナーに迫る

深澤直人、デザインを語る。

日本はもちろん、世界中のブランドからオファーの絶えないプロダクトデザイナー、深澤直人。10月から東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで行われる自身の企画展「THE OUTLINE 見えていない輪郭」の話を皮切りに、氏のデザイン論について詳しく話を聞いた。深澤氏が見据える“デザインの輪郭”とは…?

Profile


「Without Thought」と表現する自身の思想のもとに、人は意識していない方が周りと自然に調和するといった考えをもとにしたデザインワークショップを開催し続ける。イタリア、フランス、ドイツ、北欧などのメジャーブランドの仕事の他、国内の大手メーカーのデザインを多数手がける。「MUJI」壁掛け式CDプレイヤー、「±0」加湿器、「au/KDDI」INFOBAR・neonはMoMA収蔵品。2006年ジャスパー・モリソンとともに「Super Normal」を設立。受賞歴は60を超え、2007年ロイヤルデザイナー・フォー・インダストリー(英国王室芸術協会)の称号を授与される。10月16日より「THE OUTLINE 見えていない輪郭」展が開催。

展覧会について詳しくは こちら



深澤直人のビジョンがみえる企画展

−まず最初に「THE OUTLINE 見えていない輪郭展 藤井保が撮る、深澤直人のデザインの輪郭」についてお伺いしたいと思います。この企画展のベースには『モダンリビング』誌での連載がありますね。

深澤

4年ほど前、編集部から連載のオファーがありまして「藤井保さんに写真を撮っていただけるのならいいな」と冗談ぽく言ったのです。藤井さんは近よりがたいあこがれの写真家でしたから。藤井さんに撮っていただけるわけがないと思っていました。

−毎回、どのプロダクトを撮影するのかは深澤さんが決定されたのですか。

深澤

僕が毎回撮っていただくものを選んで、編集部がそれを受け取りに来る。僕は撮影には1回も立ち会ったことがなく、どういうふうに撮るのかも知らない。まったくお任せしているのです。藤井さんは毎回手焼きの写真を見せてくれました。大きな封筒を開けてみると、毎回「おお!」って感じで… 驚きの連続でした。こんなふうに見えてるんだという… 写っているものが自分のものでありながら毎回感動がありました。

−今回の展覧会タイトルについてお聞かせ下さい。

深澤

「THE OUTLINE」というのは「輪郭」という意味です。僕は過去に『デザインの輪郭』という本を書いたのですが、自分の中の概念として「みんなが無意識に見ている、あるいは思い描いているのに見えていない、わからない輪郭を導きだす」というデザインに対するイメージがあって、その「どういうふうに導きだすのか」ということが興味の対象として面白いのではないかと思っていたのです。

それと、一般的にものの写真というのは、はっきりとそこにある実像を「わからせる」ことだと思っている。たとえば「フォーカスが合ってない」ことを「ピンボケ」と言って悪い写真になってしまう。藤井さんの写真は、いつも周りの空気や光に溶け込んで対象物が写り込んでいるから、ある意味、輪郭があまりはっきりしない。でも、よく考えてみると、そのほうがリアルなんです。人間はあるポイントにフォーカスすると、他の部分は見えてないもの。だから、彼の撮ってる写真のほうが、一般的に思い込んでいる世界よりもリアルだということを知って衝撃を受けました。

藤井さんの写真に写っている「輪郭」はビジュアルとしての輪郭、実際のものです。僕のデザインの「輪郭」は生活の中の人間の記憶とかいろいろなものですから「輪郭を割り出す」という感じがあります。そんなふたつの意味合いを含んでタイトルにしたわけです。

−変な話、こんなふうに撮ってほしくなかったと思うようなことはありませんでしたか。

深澤

思わなかったです。というのも、これは僕が作ったものを記録するための写真ではないですから。藤井さんはよく「風景を撮ってる」とおっしゃっていましたし、たまたま僕のものがそこにあるという感じなのです。


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Photo: Tamotsu Fujii

−なるほど。

深澤

その一方で、藤井さんはプロダクトを目の前にして、作家は何を考えてこれをデザインしたかということを見ようとする。なぜなら僕は一切説明していませんから。僕がどういう人間で、どうしてそのものを考えたのだろうかと… その答えを写真で出すのです。ですから写真を見ると「ああ、こういうふうに自分が考えたと、藤井さんは思ったのか」と思うわけです。それは不思議な感じで「そうそう合っている!」というよりも「こういうふうに考えたかもしれないなぁ」という感じでした。

−既視感があるような?

深澤

あります。僕のデザインは、どちらかというと環境に溶け込もうとしてるわりには、図面的なのです。藤井さんはそれがわかるから、たとえば巨大なバスタブやテーブルを撮るときでも、真俯瞰で撮る。あんな大きなものを真上から撮るというのは大変です。でも、そのように撮るのです。きっとこれが深澤直人が見た視点だから、それを絶対撮らなければいかんと言って撮られるのです。なんとなく雰囲気で撮るということではなく、きっちり撮りながらも、周りの空気をも撮っている。だから、とても不思議な感じがするのです。