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青春童貞ライ麦畑

童貞畑でつかまえて

『もてない男』(小谷野 敦) 『童貞としての宮沢賢治』(押野武志) 『日本の童貞』(渋谷知美)
新書では、ちょいとした童貞ブームのようなのである。
小谷野敦『もてない男』は童貞論からはじまる。“「童貞」として、他者との関係を自ら絶っていく賢治”の世界を探った『童貞としての宮沢賢治』(押野武志)って本も出た。
そしてついに出たのが、『日本の童貞』(渋谷知美)。19世紀末から現在までの童貞観の移り変わりを徹底検証したという力作だ。
巻末についている「辞書における童貞定義の変異」や、童貞ってタイトルに出ている記事の変異、「童貞の言説史年表」も見ていて飽きることのない面白さ。

『D.T.』(みうらじゅん/伊集院 光) 『グミ・チョコレート・パイン』(大槻 ケンジ)
とはいえ、そんなに真面目に現象として童貞を考察されても、ちょっとツライ。
ならば。
現在の童貞バイブルは何かと問われれば? 
右手に『D.T.』、左手に『グミ・チョコレート・パイン』と答えよう!

『D.T.』は、みうらじゅんと伊集院光の「童貞」ブームについての対話集だ。童貞スピリッツの大切さを説き、肉体の童貞は失ったけど精神はまだ童貞だぞっていうのを、「D.T.」と呼ぼう、と。
“童貞の何がスバラシイのか?”にはじまり、“「童貞力」を高めるため”まで、抱腹絶倒の童貞エピソードが満載である。
エキサイトのインタビュー
でも、童貞ブームについて語ってもらっているので、ぜひ読んでほしい。

左手の童貞バイブル『グミ・チョコレート・パイン』は、童貞力炸裂の青春小説だ。
周りのヤツらはくだらない。自分には人とは違ったなにかがある。そう根拠なく信じている高校二年生の賢三が主人公。
自慰行為→家庭・学校で大人しく過ごす→友達の部屋でタコハイ呑んで騒ぐ→何かやらなきゃと焦る→また自慰行為という悶々ダメ人間ループの日々。走り出したいけれども、どちらへ向かって走ればいいのかもわからない。
名画座で憧れのクラスメート美甘子と出会って緊張のあまりわけのわからぬ状態になるシーンのおかしさにゲラゲラと笑い、再会して堰を切ったように映画について語るシーンでは、自分のことのように妙に嬉しくなり、オールナイトの映画騒動の後、朝日の中のシーンでは、あまりの切なさに涙うるうる。
もちろん主人公は生粋の正しい童貞。クラスのありとあらゆる女子を性妄想のえじきにしているのに、恋いこがれているクラスメートの美甘子だけではオナるまいと決意しているし、「狂った映画」と「少女を主人公にした純情な映画」を共に愛し、映画館で美少女と出会わないかと妄想し、出会ったとしてもどうだというのだ?と自問自答する。

美甘子が文芸座にもしいたとしても、お前は何ができるっていうんだ。何もないお前は美甘子と何を話すっていうんだ。クラスで一言もしゃべれないお前は名画座だとしゃべれるっていうのか。ここが逃げ場だからか? 逃げた場所ならお前は態度がでかくなるのか? 仮にしゃべれたとしてそれからどうするんだ? お茶にでもさそえるのか? 二言三言しゃべって家に帰って美甘子でオナニーか? おかずにするのか? 美甘子ではすまいと決めていたんじゃないのか? 欲情しちまったのか? ムラムラしちまったのか? お前は何だ? お前は一体何者だ? お前自分が好きか? 自分を汚いと思うか? お前って何だ?

『グミ・チョコレート・パイン チョコ編』(大槻 ケンヂ) 『Gのカンバス』(睦月 影郎)
現在、グミ編、チョコ編が発行されていて、パイン編は連載中。のほほん不定期通信によると、九月に書く分で最終回だそうです。

大槻ケンヂの『グミ・チョコレート・パイン』が、1980年前半で高校二年生の悶々小説なら、『Gのカンバス』(睦月影郎)は1971年で高校一年生の童貞悶々小説だ。
「週刊プレイボーイ」に「それゆけ童貞時代!」というタイトルで連載されたもの。
9ページ目からもうオナニー談義(9ページ目っても本文始まるの6ページ目ですから)。10ページでは女教師のタバコの吸殻を見つけて、どうオナニーしようかと思案する始末。15ページで、先生のアソコ、一体どんな匂いなんだろう。自分の部屋が持てると、これで昼間でも夜中でも好きなときにオナニーできると喜ぶ。決意は(さあ、これからうんと友だちを作って、うんと恋とオナニーをしなければ!)である。オナニーまで決意しなくてもいいと思うぞ、と突っ込む間もなく、学校に泊まって女子トイレに侵入。

そうだ、おれは男子禁制の女子トイレにいるのだ! という感激に激しく勃起し、ズボンのチャックを開けてペニスを引っ張りだした。

『あいつ』(須和 雪里)
さらにプールの更衣室に忍び込むし、クラスメートの家の前に行って言うのは「布団の中でオナニーしてるかな」だ。映画「けんかえれじい」の真似をして勃起したペニスで鍵盤を弾いたり、牛乳ビンにペニスを入れたり、「あの歯ブラシが舐めたい!」と考えたり、285ページこれすべてが、悶々大会。

奇想天外な童貞悶々小説を紹介しよう。須和雪里『あいつ』は、ある日、ちんこが喋りはじめてしまった少年が主人公だ。しかも妹に向かって、わめくセリフは下品。
「ウヘヘ、女じゃ女じゃ〜、う〜、あ〜、ええ匂いじゃ〜、ヤりてえ、ヤりてえ、一発ヤらしてくれよ〜」

もちろん少年は、正しい童貞なので傷つき困惑し、こんな下品なちんこはもぎとってやろうとまで思う。そして、ちんこは、下半身から独立。ちいさい帽子や服まで着せられて、鬼太郎の目玉のおやじみたいに御椀のお風呂に入ったり、学校で大暴れしたり、大暴走奇天烈小説なんだが、ラストは切なくジーンとさせるんだから凄い。

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