虚弱体質でしょっちゅう床についている若だんなと家族同様の妖怪たちが大活躍する江戸推理帖「しゃばけシリーズ」の著者・畠中恵さん。最新刊はなんと、元大物国会議員の事務所を舞台にした連作短篇集だ。それにしても、なぜ政治家を取り上げたのか? 畠中さんにうかがった。
畠中恵 はたけなか・めぐみ
1959年高知県生まれ、名古屋育ち。名古屋造形芸術短期大学卒。漫画家アシスタント・書店員を経て2001年
『しゃばけ』
で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、デビュー。デビュー作から
『ぬしさまへ』
『ねこのばば』
『おまけのこ』
と続く「しゃばけシリーズ」が大人気。公式サイト
「しゃばけ倶楽部」
もある。ほかの著書に
『百万の手』
『とっても不幸な幸運』
『ゆめつげ』
など。
<新刊紹介>
『アコギなのかリッパなのか』
出版社 : 実業之日本社 価格:¥ 1,680 (税込)
主人公は元不良の勤労大学生・佐倉聖。中学生の弟を1人で養うため、元大物国会議員・大堂剛の事務所で働いている。ボスの食事の面倒から選挙運動の手伝いまでこなす事務員だ。大堂の弟子である代議士たちは何か厄介な問題が起こると事務所に相談にやってくる。聖は度胸と機転を活かして、事務所に持ち込まれる奇妙な事件を解決するのだった……。政治の世界を身近に描いたユーモラスな連作短篇集。
地元議員の事務所に突撃取材!
――『アコギなのかリッパなのか』というタイトル、絶妙ですね。政治家という人種をひとことで言いあらわしたような。
「五色の猫」「白い背広」「月下の青」……と、1話1話のタイトルに色をずっと使っていたので、色を総称したタイトルをなんとか考えようとしたんですけれども、ぴったりくるものが思い浮かばなくて。考えているうちに、主人公クラスがみんなこういう性格をしていると気がついたんですよ。どちらかというとリッパなほうに傾いてほしいんですけどね。でも、人間だからそれだけじゃないかなと。
――そもそもなぜ、政治家の事務所を舞台にしようと思われたんですか?
かなり前のことになりますが、たまたま政治家の方とお話しする機会があったんです。そのときにテレビなどのメディアで見たり聞いたりして抱いていたイメージとちょっと違うなと感じました。それでデビュー前の習作に、政治家が出てくる話を書いてみたんですね。デビュー後、何を書こうかとなったときに、そのキャラクターだけ取り出して、また新しく書き直したんです。
――今回改めて取材していらっしゃいますよね。
今回取材させていただいたのは、うちの近所に事務所がある方なんです。大変申しわけなかったんですけど、突撃取材で。家から近かったもので、「すみません、お話聞かせてくださいますか」って言ったら、事務長さんが出ていらして、「いいですよ」という感じでした。
――議員とはお話しされたんですか?
お見えになりませんでしたね。この小説の主人公も議員さんじゃないので、事務長さんのお話でちょうどよかったかなと。毎日どういう仕事をなさっているかという裏方のお話を聞けましたし。
――取材してびっくりされたこととか、印象に残っていることは?
事務長さんに「事務所に来る一般の方の相談で、多いもの何ですか?」とお聞きしたら、「都営住宅に入れませんかという陳情です」と言われて「ああ、そういうものか」と。政治家にプッシュしたら、自分が先に入居出来るんじゃないかと期待している方もいるわけです。一筋縄でいかないのは政治家のほうだけではなくて、有権者のほうも同じだと思って、面白かったですね。
――有権者も大局的に見ていい政治家かどうかじゃなくて、直接役に立つことをしてくれたかどうかで支持したりする。
でも、その事務長さんは「無理です」とはっきりおっしゃっていましたけど。「『あれは政治家が言おうがどうしようが、抽選なので無理ですよ』といつも言うんですけど」って(笑)。
――本書を読むと、政治家の仕事は実に種々雑多だなと感じますね。
細かい業務については、取材先の事務所で聞いたことだけじゃなくて、政治家秘書が運営するサイトや、ハウ・トゥ・ビー・政治家みたいなマニュアル本も参考にしました。調べれば調べるほど、政治家になるのは大変そうだなと。
畠中恵インタビュー 政治家って、アコギなの?リッパなの?
1/3