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巻末特別袋綴じの秘密
豊崎 『文学賞メッタ斬り!』をお読みの方ならご存知かと思うんですけど、わたしは大森望のフリスビー犬とか言われていまして。「さあ、トヨザキ、取ってこい!」と危険なネタを投げられるたびに、勇んで自分から取りにいって、最終的にたいへん損をする役回りになってます。そして、要らぬ敵ができていく(笑)。
大森 それだとまるで僕に責任があるみたいだけど、要らぬ敵を作るのはもともと豊崎さんの得意技でしょ。『そんなに読んで、どうするの?』の巻末特別袋綴じがちゃんと証明してるじゃないですか。ええっと、これ、いつの話でしたっけ?……2001年でしょ。『文学賞メッタ斬り!』のはるか前じゃないですか。豊崎由美はとっくの昔に凶状持ちだった。
豊崎 あ〜、そういうこともありましたねえ。
大森 せっかくのそのキャラを生かす方向で演出しているわけです。
豊崎 これはですね、わたしは「直しますよ」って言ったんですよ、「Title」の編集者に。あなたたちは、芥川賞や直木賞を主催している出版社の社員なんだから、この罵詈雑言原稿ではさすがにまずかろうと。一度は好きに書いてみたかったから書きましたけれども、わたしもライターなんだから柔らかい表現に直すべきところは直しますよって。なのに、担当編集者はは「いや、僕もデスクも編集長も面白いと言っているので、このままでいいです」っていうから……。で、その号が出た頃、2ちゃんねるの雑誌板にある「Title」スレを見てたんですよ。どんな評判かな、わたしのメッタ斬り原稿の感想を書いてくれてる人がいるかなと。そしたら、「なんかライターの豊崎由美が書いた原稿のせいで『Title』が廃刊になるらしいよ」っていう書き込みがありまして。血の気が引くっていうのは、こういうこというんだなと思いましたね。で、腰抜かしたまま「Title」編集部に連絡したら、「大丈夫です! 大丈夫です!」としか言わないの。「全然、大丈夫じゃないみたいじゃないですか」って言っても、「でも、大丈夫なんです! は、は、廃刊にはなりませんからっ! 多分なりませんからぁ!」と、まるで自分に言い聞かすように叫ぶ編集者が可哀想で可哀想で。その時は、とうとう自分のライター人生も終わるんだなと覚悟しましたね。
大森 まあ、廃刊にはならなかったよね。スタッフは1人も残らなかったけど。
豊崎 いや、1人だけ残ったんです。そいつが、「毒書特集ってのをやるから、トヨザキさんも何か書いてよー」ってそもそもの原稿依頼をしてきた、「Number」連載(それ行けトヨザキ!!)時の初代担当者Y江ですね、はい。
大森 その張本人以外は編集部員総取っ替えで、「Title」はほとんど別の雑誌になってしまった。
豊崎 それまでわたし「Number」とか「週刊文春」とか「CREA」とかで、文藝春秋の“犬”とまで言われるくらいたくさん仕事をしてたのに、やっぱりピターッと注文が来なくなりまして。編集者に「やっぱりああいうことがあったから、わたしを使っちゃまずいんだよね?」って聞いても、「そんなことありません。そういう上からの圧力は何もかかってません」と答えるですよ。でも、ねえ……。
大森 あうんの呼吸で依頼がなくなる。いかにも日本的な因果応報。
豊崎 まあでも、2003年あたりからポツポツと仕事が来るようになって、去年なんかは「週刊文春」で「NIKITA」を斬ったり、『頭がいい人、悪い人の話し方』を斬ったりっていう、また要らん敵を作るような原稿を依頼されたりもしてますけど。ただ、『週刊文春』はわたしに「闘う書評家」って肩書をつけたんですよー。いまさら「闘う書評家」かよ、闘ったら干したのどこだよって、ちょっとムッとしましたけどね、あの時は(笑)。
大森 僕も30歳までは「戦うSF評論家」の肩書きでやってましたけどね、40代になっても戦ってるトヨザキ社長はほんとにえらいと思います。しかし、それはそうと、ウェブで『そんなに読んで、どうするの?』の感想を読んでると、あの巻末袋綴じについて、「抄録とはどういうことか!」「途中で終わってるじゃないか! そんなもんご大層に袋綴じにするな!」とか怒っている人がけっこう多くて。これ、もともと「Title」初出の原稿自体が、罵倒原稿の途中から始まって途中で切れてるという趣向のセンターフォールド見開き2ページだったんですよね。トヨザキ社長がエンドレスで悪口を言いまくってる、その一部だけを切りとって載せました、みたいな。単行本は、それをそのまんま再録している。
豊崎 そうそう、別にことさらケチくさく作ったわけじゃないんです。
大森 しかも、抄録どころか、実は単行本バージョンのほうが初出より1文字増えている!
豊崎 「Title」では最後の1文字が「柳」なんですけどね。
大森 そうそう。渡辺淳一もひどいし、石原慎太郎もひどいが、一番ひどいのは――と引っ張って、最後の1文字が「柳」。
豊崎 単行本版では「柳」のあとに「美」がついてるんですけど、大森さんは「葉」にしろって(笑)。
大森 初出で読んでいた人だけが仰天する。「えっ! 柳美里じゃなくて柳葉敏郎かよ!」って。
豊崎 いいアイデアだなって思いましたけど、担当編集から意味がわかんないと大反対にあいまして(笑)。 |
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| 大森望×豊崎由美 2人あわせて、約2,000冊!『そんなに読んで、どうするの?』 |
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