切込隊長降臨――「けなす」ことの効用
ネットが普及し、掲示板やブログユーザーが拡大するにつれ、ケンカも質的に変化を遂げています。見知らぬ人に論争をふっかけるなんてのは、ネット以前には考えられなかったこと。そこで、ネット上で華麗な「けなし芸」を披露し続ける切込隊長こと、山本一郎氏に、ネットバトルのあり方について語っていただきました。
山本一郎
1973年、東京生まれ。個人投資家、プランナー。イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社代表取締役。ビジネスからカルチャーまで幅広いジャンルにて、独自の文体を駆使した文章を多数執筆。ネット界では「切込隊長」の名で知られる。
切込隊長BLOG(ブログ)〜俺様キングダム〜 |
――著書の『けなす技術』では、ネット上の言論としてけなすことの効用を説いておられますね。いま、あえて「けなす」ことを言挙げするのはなぜですか?
隊長 ある問題について議論する場合、擁護する人とけなす人がいるほうが問題の争点はハッキリしますよね。論点がぼやけるタイプの主張や意見でも、誰かがからんだりけなしたりすることで、問題が再定義され、読む側も問題の全体像が把握しやすくなると思うんです。
――でもネットでは、けなしている人は大勢いるように思えますが。
隊長 みんなで、けなし合ってますよね。でも商業誌などのほめる技術に比べると、まだまだけなす技術は未熟だと思うんですよ。
マンセー(万歳)したり賛美したりする側の技術って、かなりできているでしょ。こうすれば人は動く、「全米が泣いた」とかいえば大体人が来て、あとはもう言葉遊びの世界。いかにキャッチーな言葉で多くの人に知ってもらうかということで技術的には完成されている。
でもそれに対抗する側、カウンターする側の技術がまだなっていないんですよね。誰かが映画を観てその感想を書く、それを観てユーザーが行こうか行くまいか決める。もちろんいまでも、こういうことはありますけど、もう少し需要者側からのけなす言葉、評価する言葉が出てもいいのではないかと。
――なるほど。たしかに商品情報などは、雑誌や企業の公式サイトよりも、ブロガーの日記のほうがアテになることって多いですね。ただ一方で、ちょっとした一言が集中砲火を浴びやすいのもネットにはありますし。
隊長 ああいう集団ヒステリー現象は、書く側にもうかつな部分があるんですよ。歯止め策というか、書ききらない策というのが書く側にもう少しあっていいんじゃないかと思います。ネット住民は欺瞞に敏感です。両論併記をうまくやっていかないと、特定の方向の人たちから目の敵にされる。で、何かきっかけがあるとダーッと攻撃されるんです。
――隊長のブログは、そのあたりの裁き方が見事ですね。
隊長 やっぱり2ちゃんねるで経験したからだと思うんですよね。あのころ、自分のスレッドとか立って、「禿げ」とか書かれるわけですよ。最初、頭に来てしようがなかったけど、「他の人から見るとそういうことなのね」と自分なりに理解できるようになって、匿名で書いている人との間合いを自分の中で設定できるようになったんですよね。
罵倒されたときに、下手に削除なんかすると、かえって自分の手の届かないところでやられる可能性が高まるだけ。むしろ、無料でコンサルしてもらってるぐらいの気持ちで、罵倒されたことを取り込むぐらいにならないと。
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