さて、この原稿を書いている私は、現在33歳。吉本隆明のスゴさは、リアルタイムでなく後追いで知った世代です。で、何がカッコよかったかというと、彼の啖呵の切り方でした。『重層的な非決定へ』『情況へ』という2冊の本には、現代思想やニューアカのスターたちをもメッタ斬りにする素敵な啖呵がいっぱいに詰まっています。それはたとえば、こんな感じです。
浅田さんよ、おれ『構造と力』読んだけど、あれじゃあ。まだ比叡山で修行して大僧正になりたがっている学僧という枠組みを出られてやしない。それにもっといけないところは、逃げること、変幻自在なこと、軽みを説いているようにみえて、ほんとはまだ「隠れ構造派」の尻尾が切れてないじゃないか。
蓮實や柄谷の対談は、よほどバカな知的なスノッブでないかぎり、退屈で途中で居眠りしたくなる。ちょうど凡庸な洋もの映画の文芸ものを観てるとおなじで、無理していいなんていうのは、よほどの閑人だよ。
すごいでしょ。現代思想の3大スターを吉本隆明はこともなげに「3バカトリオ」と一撃。90年代に20代だった私にしてみれば、蓮實重彦、柄谷行人、浅田彰という面々は、知のスターだったわけで、その彼らをケチョンケチョンにする吉本隆明ですから、興味がわかないわけがありません。
さらに、吉本隆明は問題あるところに必ず、ビックリするような発言をかましてくれます。すでに紹介した『「反核」異論』もそうだし、地下鉄サリン事件のときも麻原彰晃を宗教者として評価したり、9・11のときにテロはよくないが、戦争はもっとよくないと言ったり。いや、社会問題に限られることではありません。昨年刊行された著者初の恋愛論『超恋愛論』でも、「一夫一妻制というのは、人類の理想なんじゃないでしょうか」とか、恋愛は「自分の細胞が相手とぴったり合うかどうか」が大事とか、これまた深遠なフレーズが満載です。
無責任な言い方で恐縮ですが、いまだに吉本隆明は面白いのです。今後も、この戦後最大の思想家の言葉からは目が離せそうにありません。
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