思想界の吉田拓郎
まことに勝手ながら、私は吉本隆明を思想界の吉田拓郎と呼んでおります。どちらも団塊世代に熱狂的なファンを持ちながら、若い世代にはあんまり知られていない。「吉田拓郎? あ、KinKi
Kidsの横に座ってた人ね」というのと同じく、「吉本隆明? もしかしてばななのパパ」というあたりが、名前を知っている人の平均的な反応ではないでしょうか。
まあ、それも無理はありません。簡単に申し上げますと、吉本隆明は「戦後最大の思想家」と呼ばれている人です。その存在感は唯一無二、フォークといえば吉田拓郎というように、思想といえば吉本隆明なのです。ちなみに私は、二人とも大好きです。
吉本隆明は、1924年(大正13年)の生まれですから、もう80歳を超えるおじいちゃん。しかし、このおじいちゃんはいまだに毎年のように何冊も本を出し、同時におじいちゃんを紹介した入門書も途切れることなく出続けています。
吉本隆明に敬意を寄せる人は、みな彼の言葉にはウソがない、信用できるといいます。知識人を評する言葉として、「鋭い」「切れる」という頭脳の明晰さを賞賛する言葉はよく耳にしますが、「ごまかさない」「ウソをつかない」という評価はあまり見かけません。その意味で、吉本隆明の評価は、その言論だけでなく人柄も含めてまるごとの評価なのです。
しかし同時に、20代、30代の人にとっては吉本隆明はとっつきにくい。彼の昔の本を読んでも、「なぜそんなことに怒るの?」というのが率直なところだし、本格的な文学論や宗教論、国家論などは難しすぎて手が出ません。入門本はたくさんありすぎて、何を選んでいいか、よくわからない。
そこで今回は、すぐれた入門書を導きとして、吉本隆明の入門の入門をはたしてみたいと思います。「ふーん、ばななのお父さんって、そういう人だったのか」ぐらいに思っていただければ幸甚です。
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