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方言ヒロインを探せ!!

切ない恋に深い愛 中国/四国地方

【中国・四国】
初恋モノばかりが並んだ中国地方。甘酸っぱい地方なんでしょうか。一方、四国地方は、ディープでマニアックな二人がラインナップ。えーと、別の意味で酸っぱいです。

▽島根
「大沢君が今 わしを一番好いとるってわかるんじゃもん」
右田そよ
『天然コケッコー』くらもちふさこ/集英社
ちょっと想像してみてください。三つ編みおさげの女の子に「わし......」なんて伏せ目がちに言われたら、そうとうドキドキしません?
『天然コケッコー』は隣町まで1時間、小中学校あわせても全校生徒はたった5人という島根県の「ド田舎」が舞台のラブコメディです。そよは、一人称が「わし」というバリバリの方言ヒロイン。のどかな自分の村も大好きだけど、プリクラにもルーズソックスにも憧れるこのバランス感覚がチャーミング。また、そよちゃんは、そうとうレベルの高いルックスをしているのに、人の少ない「ド田舎」なもんで、自分の魅力にぜんぜん気づいていません。そんなシチュエーションにも萌え。東京に修学旅行に行った際のたどたどしい標準語もたまりません。
実は、この特集を思いつくきっかけになったのがこの作品。

▽山口
「心がふるえるっちゅーんはこーゆーんをゆーんかー」
小浜かよ子
『瞬きもせず』紡木たく/集英社
山口県の県立高校に通うことになった小浜かよ子が、同じクラスの紺野君から告白されるところから始まる初恋の物語です。男の子との「付き合い方」で悩む内気な彼女。のんびりとした言い回しが、初恋特有のキュンキュン感を際立たせています。
また他の登場人物も全員、方言を使うので、読み終える頃には、山口弁がうつるちゅーんかのー、ってなもんです。

▽広島
「そんなんしたらなんか 恋愛ドラマの最終回みたいなが」
宇野初子
『赤い文化住宅の初子』松田洋子/太田出版
母とは死別、父は行方不明。一緒に暮らしている兄は、ろくに働かないくせに、深酒したり、デリヘル呼んだり……。かなりヘビーな境遇の中学三年生・初子。
広島弁というと、ヤクザ映画風味なドスの利いたイメージが強いですが、彼女がため息まじりに話す広島弁は、それとは違います。全体に間延びしたような、ため息まじりな広島弁は、M気たっぷりで妙にセクシー。帯のコピーが『不幸』ではなく『薄幸』なのは、その辺りが理由かも。

▽香川
「そやろ? 犬をしつけるんは主人の役目や」
北原紗月
『月光の囁き』喜国雅彦/小学館
普通の恋愛がしたいだけだったのに! ストーカーな主人公を嫌悪していたはずなのに! 嗚呼、それなのにそれなのに、この物語のヒロイン・北原紗月は、次第に加虐性を身につけ、立派な『S』として成長していきます。これも、おそらく方言じゃないと成立しにくかった作品だと思います。「そうでしょ? 犬をしつけるのは主人の役目よ」だと芝居がかって聞こえちゃうというか、わざとらしいというか……。
SMといえば「女王様とお呼びっ!!」と叫びつつ、ロウソクたらして、ムチでぴったんぴったん、というイメージの方は、一度この愛あふれる香川弁による罵倒の世界にふれてみてはいかがでしょう。

▽高知
「人は生きててな、どこまでがしんどくて、どこまでがしあわせなんやろか」
かの子
『ぼくんち』西原理恵子/小学館
貧乏人が吹きだまるどん詰まりの町で暮らす、種違いの3人姉弟。出ていった母親の代わりに、ピンサロで働きながら弟たちの面倒をみているのが、かの子です。作中に具体的な地名は出てきません。しかし『山と海しかないしずかな町』という設定は、作者の出身地である高知県だ、と勇気を持って断定。楽しいことばかりじゃない人生だけれど、いつでもニコニコと微笑み、弟たちや町の人たちを見守るかの子ねーちゃん。そんな彼女がぼそりとつぶやく高知弁ってしみるんです。
そうそう、かの子に上の質問をされたおばあちゃんの返答が実に名言。
「そらカンタンや。食わせてもろてるうちがシアワセで、食わせなならんなったらしんどい」
あー、なんか深い。深いデスよ。

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