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お正月はハワイ!

7.ダメ夫、ワイキキに帰る

ダメ夫さんが日本人の話し声で目を覚ますと、そこはバスの中でした。どうやらバスはワイキキ最大のショッピングセンター「アラモアナ・ショッピングセンター」の前で停車しているようです。

ダメ夫 (あれ…? 今のは全部、夢?)
時計を見ると、ホテルを出発してから1時間もたっていません。
ダメ夫(やっぱり夢だったのか。そうだよなあ。オバケなんて、いるわけないし。でも、楽しい夢だったな)
ダメ夫さんは不思議と軽い気持になり、あれほどいやがっていたショッピングセンターに入ってみたくなりました。

お店の中を散策すると、肌もあらわな若い女性がたくさん歩いています。中には水着姿の女性もいました。太っている人もおじさんもおばさんも、象のように平和な瞳で露出度の高い服を着て堂々と闊歩しています。
ダメ夫 「ああ、開放的で素敵だなあ。日本では会社の制服と厚化粧に閉じ込められて窮屈そうな女の子たちも、ここではリラックスして楽しそうだ。思うに僕は、何かをする前から頭の中で考えすぎて、世界のいろいろなものにバツをつけてばかりいた。でも、そんなのはもうやめだ」
ダメ夫さんは海水パンツとビーチサンダルを買い、ビーチに向かいました。ニコニコと道を行くダメ夫さんに、見知らぬおばさんが「アロハ〜」とあいさつします。
ダメ夫 「アロハ〜」

ダメ夫さんが海にプカプカ浮いてぼーっと青い空をながめていると、どこからともなくあのウクレレの音とオバケの声が聞こえてきました。

オバケ「ハウオリ?」

雲が一瞬オバケの形をとって、またすぐ風に流れていきました。

▼ハワイ小説

『ワイルド・ミートとブリー・バーガー』ロイス・アン・ヤマナカ 斎藤倫子訳/東京創元社
ハワイ島ヒロで暮す日系少女ラヴィの生活はクソッタレなことだらけ。標準英語を話せなくて先生に怒られるし、ジャップのくせにバカだといっていじめられるし、友達もいないし、なんといっても貧乏だし。休みの日にも一家総出で日給8ドルのマカデミアンナッツ拾いのバイトに駆り出されるラヴィの夢は、金髪の白人(ハオレ)になること。唯一の親友であるオカマっぽいジェリーは、キキララの鉛筆やサイジョー・ヒデキのピンナップなんかをいっぱい持ってるお金持ちの日本人少女たちと仲良くなってるようだけど、やきもちなんか焼いたりしない。いつも自分以外の何かに憧れて、世界に苛立っている少女のせつない青春グラフティ。と同時に中上健次ばりのごんぶとな土着文学でもあり、リリカルなマジックリアリズム小説でもあるのだからハワイの大自然はすごいといわざるを得ません。なお、本文中に何度か登場する特撮番組『人造人間キカイダー』(日本での放映は1972〜1973年)は今でもハワイで人気。夜テレビをつけるとふつうにキカイダーが放映されています。今年は放送30周年記念だとかで、日本から来た俳優さんたちがハワイでイベントやってました。

『楽園ニュース』デイヴィッド・ロッジ/白水社
ワイキキを舞台にした童貞喪失ストーリー…というと能天気な青春小説っぽいですが、主人公は40代のしがない独身神学講師だったりするので一筋縄ではいかないのだった。土偶そっくりの女に言い寄られたために神学者への道を絶たれ、禁欲的な生活を送る純情中年バーナードは危篤の叔母を見舞うため、老いた父を連れてホノルルを訪れます。そこには彼の人生を大きく変えるミラクルな出来事が待っていたのでした……。ウォルシュ一家の和解の物語を中心に、同じパック旅行に参加したホモセクシュアルの息子とその両親、新婚早々夫の浮気で口をきかなくなったカップル、ペダンティックな観光学者、男とうまくいかない女2人連れ、クレーマー一家らのサブストーリーが同時に展開します。いくつものもつれた糸玉が楽園の風の一吹きでするりと解ける、そんな小説のマジックを味わえる傑作でございます。ワイキキの観光スポットがいくつも出てくるので、旅行から帰ってきてから読むと面白さ倍増。

(構成・文 demi/Beltorchicca&パン山もぐ彦/パン工場イラストも/2004.11.25)

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