ドイツ人精神科医による世界初の学術的バカ論文。バカを「知能の低すぎる馬鹿」「知能の正常な馬鹿」「知能の高すぎる馬鹿」の3種類に分け、それぞれについて医学、発達心理学、生物学、哲学など広範な学問的知識を駆使して分析。バカを研究したために第二次世界大戦後に政治犯として投獄された自身の経験談も交えながら、「人間は愚かさから免れ得ないが、それゆえに救われる」という結論を導き出す。バカについて語るなら巻末のバカ格言集は必読。「愚行がなくなれば人類は滅亡するだろう(ロガウ)」「文字通りの人類絶滅を企てるものは賢人である。愚者には原子爆弾や火薬などがつくれるはずがない」「占星術は、途方もないナンセンスが何千年も生きながらえていることの貴重な証人である。大昔の馬鹿な人類が生んだもので、あらゆる時代の馬鹿に、これほどぴったりするものはない」「修業とは、上役よりも馬鹿らしく装う術のけいこである(H.レンツ)」
人間は愚鈍という実り豊かなひざに抱かれて、永遠に変わらぬ夢を見つづけているのであり、そのおかげで初めて生きて行こうという気になれるのである――愚鈍が、ただ愚鈍だけがこの人生の守り神であって、これによって初めて錯覚のヴェールが織られ、仕合わせな誤謬が知能のヤリ玉に上らずに済み、人生が辛抱できるようになるのである |