付録:英単語集ヒストリー
最後に、英単語集はどのように進化してきたか、各時代の英単語バイブルを紹介しよう。まず最初は、通称「赤尾の豆単」の名で親しまれてきた『英語基本単語集』(旺文社)だ。初版発行は1942年。以来、何度かの改訂を経て現在も発刊されている。「赤尾の豆単」は、単語の配列がA〜Zと辞書と同じようになっているのが特徴。例文はなく、単語と派生語、同義語、反意語などを押さえている。もっともシンプルな英単語集といえるだろう。
この「赤尾の豆単」に、真っ向から勝負を挑んだのが「出る単」こと、森一郎の『試験に出る英単語』(青春出版社)だ。初版の発行は1967年。「出る単」のウリは、まず収録語数が少ないこと。豆単が3800語なのに対し、「出る単」は1800語である。次に、辞書式の語彙配列ではなく、重要な単語から順番に並べていること。さらに、1語1訳主義を採用していること。このように「効率」を最優先に編集された「出る単」は、当時の受験生に圧倒的な支持を受け、瞬く間に英単語集シェアを独占した。
70年代、80年代には、「出る単」に対抗して多くの英単語集が発刊されたが、基本的なコンセプトは「出る単」の域を超えることはなかった。健闘したのは、1982年に初版が出た、旺文社の『英単語ターゲット1900』だろう。不動の地位にあった「出る単」も、この頃になると、収録語彙が「古臭い」と言われるようになる。それにぶつけるように、「ターゲット」ではコンピュータ分析を駆使して単語を配列。コンセプトこそあまり変わらないものの、精度の高さで「ターゲット」は「出る単」を凌駕する勢いだった。
ところが1992年、英単語集の世界にパラダイムシフトが起こった。「速単」の名で親しまれている『速読英単語』(増進会出版社)の登場だ。「速単」の新しさは、なんといっても「英文のなかで単語を覚える」というコンセプトを前面に打ち出した点だろう。それまでも例文を付した英単語集はあったが、「速単」のように200語程度の英文をそのまま掲載するものは単語集としてはありえなかった。「速単」は、「出る単」以来、久方ぶりに英単語集のコンセプトを大転換させた単語集だったのだ。
「速単」と類似のコンセプトによってつくられているものに、『DUO』(アイシーピー)がある。こちらは長文ではなく、一つの英文のなかに重要単語・熟語を凝縮するというコンセプトだ。94年の発刊以来改訂が重ねられおり、現在の『DUO 3.0』では、560本の例文に重要単語1600と熟語1000が詰まっている。「速単」と「DUO」の2冊が90年代以降の英単語集の覇者といっても過言ではない。
近年の注目すべき英単語集は、98年に発刊された『システム英単語』(駿台文庫)。こちらは「ミニマル・フレーズ」というコンセプトで、入試によく出るフレーズの形式で単語を覚えようというもの。単語のみならず、入試で問われる意味までコンピュータ分析しているというから驚きだ。
はたして『萌える英単語 もえたん』は、「速単」や「DUO」に代わる受験英単語集の定番となるのか!?
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