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きもの本ブームの秘密

最近、きもの本がよく売れているという。
「アンティーク」がキーワードらしい。でも、なぜ今、きもの本がブームなの?

官能と陶酔を味わう「夢」の本

 
  エキサイトから「きもの本ブームを調査せよ」という司令が下った。やばい! それはやっとアルコール依存症から立ち直った人間にお酒の本を取材してこい、というのと同じ。若い頃、分不相応なきもの道楽で破産しかけて以来、なるべく呉服屋さんから遠ざかり、本屋に行っても、きもの雑誌は視界に入れないようにしてひっそり暮らしてきた私だが、自分を試されているかのこの司令に、おそるおそる調査にのりだした。

たしかに今年出版されただけでも、きものに関する単行本には『樋口可南子のきものまわり』(5月)、『白洲正子のきもの』(9月)、群ようこ『きものが欲しい!』(10月)など、ムックでは『アンティーク&チープに KIMONO道』(4月)、遠藤瓔子著『きものであそぼ』(8月)、『着物のお洒落自由自在 アンティーク着物』(11月)などがあり、出版不況のなか、この一角は賑わっているようだ。

まずは、ブームの実態を調べようと、若い女性のお客さんも多いリブロ池袋店にやってきた。

「きものの単行本には、"女流作家のきもの道楽"と"女優のきもの自慢"、大きく分けてこの二つの流れがありますね」と分析するのは、文芸書担当の荒木幸葉さん。なるほど、確かに文芸書の棚には、白洲正子や林真理子、群ようこなど作家系きもの本と、檀ふみ、樋口可南子など女優系きもの本が並んでいる。

群ようこ『きものが欲しい!』の帯には「使ったお金で家が建つ」とある。それだけ稼いでいるからこそできること。貧乏人がマネできる世界ではないのだ。成功した女流作家は、きもの道楽に走る傾向がある。その代表的な系譜が、宇野千代から林真理子ときて、群ようこ。白洲正子や幸田文は「暮らしの美学」というニュアンスだからちょっと違う。ブランド品やホストなど、女流作家(漫画家含む)が大金をつぎこむ対象物はいろいろあるが(例:中村うさぎ)、大金を蕩尽している点は同じでも、きものの場合、文化的にハイブロウな行為というワンランク上の満足感があり、なんといっても肌にまとうものだし、男性作家が若くてきれいな女に溺れるのと同じくらい、官能的な陶酔感を味わえるのが、高価で美しくてしかも着て歩けるきものなんじゃないかと思う。

女優のきもの本では、『樋口可南子のきものまわり』がよく売れているそう。女優さんの本だが、単なるきもの自慢の本ではなく、日本文化の香る場所や伝統工芸の作者を探訪したり、プライベートな和のこだわりをご紹介、それをきもの姿で、といった趣きの本。プライベートもなんとなく知的で文化的なイメージがある樋口可南子のきものまわりだからこそ見てみたいと興味をもつ人が多いのは自分もそうだから納得できる。

きもの本のなかでも別格として君臨するのは、『白洲正子のきもの』。ビジュアルブックとしても文句なく美しい本だが、数年来続いている「白洲正子ブーム」があり、そこにきて「きもの本ブーム」と見るや、すかさず『白洲正子のきもの』をつくってしまう出版社の機敏さにも唸らされる。

これらの本は、ただ本を眺めているだけで優雅な気持ちになれる本で、ちょっとした参考にさせてもらうことはできるけど、貧乏人にはなかなか真似できない世界のお話。きものの「夢」と「現実」のうち、「夢」のパートを担当する本たちだ。では、「現実」のきもの本はどうだろう。
   
樋口可南子のきものまわり
清野恵津子著
『樋口可南子のきものまわり』(集英社、本体2700円)
雑誌「メイプル」の連載をまとめたもの。タイトルはご主人の糸井重里さんが考えたそうで、ご夫婦で仲よく着物姿で登場。すでに7刷!
きものが欲しい!
群ようこ著
『きものが欲しい!』(世界文化社、本体1400円)
百万単位できものをポンポンご購入になり、羨ましくてヨダレが出る本。群さんの素敵なきもの姿もカラー写真で拝見できます。
白洲正子のきもの
『白洲正子のきもの』(新潮社、本体3600円)
ご自分で染織工芸の店「こうげい」を経営していたほどの白洲正子さんであるからして。大判オールカラーで秘蔵のきものを紹介し、きもの姿の麗しいお写真も。絣や紬が多い。もう、たまりません!

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