インタビュー枡野浩一--どう解釈されようと、どう面白がられようと、かまわない

仲間たちに温かく見守られて。
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装幀の篠田直樹さん。美しくも愛敬あふれるレイアウトは本書の魅力のひとつ。「お笑いではあるけれど、上品な本にしたいと思いました」。
枡野さんのアシスタント、松田アキさん。「荒野にひとりで立ってるような状態」の枡野さんを支えた影の功労者。
(デザイナーの篠田直樹さん、登場)

篠田 遅れてすいませ〜ん。

枡野 デザインのことは、もう褒め称え終わっちゃったよ。

――すごくステキなデザインの本ですね。とくに、短歌へのつっこみを視覚化したデザインがすごく面白いです!

枡野 彼とはつきあいが長くて、昔、広告会社にいたとき、僕がダメなコピーライターで、彼がデザイナーで。入社も僕が1ヶ月早いだけで、ほぼ同期。彼の結婚式の司会を、しどろもどろになりつつ担当したこともあって。結婚式って、何年前なんだっけ?

篠田 10年ぐらい前だね。

枡野 そんなに結婚生活が続いているんだ。尊敬しちゃうね! そんな縁で、僕の本のデザインを何冊か彼にお願いしてるんです。僕のアイデアを再現してくれて、なおかつ、僕が気がつかなかったことまで彼がちゃんと考えてくれて。篠田くんは、あまり本が好きじゃないとこがいいんです。ふだんはCDジャケットのデザインとかをしていて、あまり本が好きじゃない人のデザインは新鮮なんですよね。篠田くん、すごく柔軟性がある人なんですよ。いろんなリクエストに対応できる柔軟さが素晴らしい。僕がワガママだから、デザイナーまでワガママだと大変。

篠田 枡野くんが変な性格してるのも知ってるし、言い出したら聞かないようなところもわかってるから。本はやっぱり著者のものだから、著者がいいと思うものじゃないとね。

枡野 僕、本は売りたいと思っていて、売れないと意味がないと思うんですよ。ちゃんと書店に並んで、通りすがりの人が買うようじゃないと、自分のような短歌は意味がないと思っていて、「売りたい」っていうのは、重要なことなんですね。でも、「記憶喪失になった自分が見たら、好きになる本」じゃないとダメで、その中で最大限、いい本にしたいといつも思っていて。

――記憶喪失になった自分?

『枡野浩一短歌集1 てのりくじら』実業之日本社
オカザキマリの絵とともに短歌を楽しむ、ビジュアル短歌集。『枡野浩一短歌集2 ドレミふぁんくしょんドロップ』とセットです。
枡野 僕、昔、すごく疲れているときに夜中に青山ブックセンターの六本木店で、『てのりくじら』をたまたま手にとって買って、喫茶店で読んでたら、「すごくいい本だな。こんないい本、誰が作ったんだろう。隅々まで素晴らしいよ、完璧!」って思ったことがあって。もちろん自分の本なんですけど、出してから何年もたってて、ずいぶん読み返してなかったので、他人の目で読めたんです。だから、そういう本にしたいんですよ。「20歳の自分が見たら、気に入ってくれる本にしたい」って、誰でも思うよね? そんなロマンチックなことを考えるのは、僕だけ?

篠田 「20歳の人」ならわかるけど、「20歳の自分」っていうのはないなあ。

枡野 そっか、僕、本が好きで、高校生のとき、図書館とか本屋さんをはしごしてて、なにが不満だったかって、自分の本がないことが不満だったんですよ。「そうだ、僕の本がないから、こんなにも満たされないんだ」と思って。その瞬間に、「自分の本が書店にならばなければいけない」と本当に思ったんですよね。そのときの、狂ったような思いこみが、現在にいたってるから、当時の狂った自分が見たときに、許せる本じゃなきゃダメだと思っていて。

――篠田さんはどんなことを考えてデザインしたんですか?

篠田 「短歌×ネット」ってイメージがなんとなく暗いので、暗くない本がいいなって。

――それで金色に。

篠田 なんとなく金がいいかなと。マジメな短歌もあるので、お笑いではあるけれど、上品な本にしたいと思いました。

枡野 時間がなかったから、「まず、『笑い』の章の原稿できたから送るよ」とかいって送ってデザインしてもらって、また次に原稿、できたところを送って、という流れ作業でしたね。

篠田 送られてくる原稿をどんどん打ち返していく、バッティングセンターみたいでした(笑)。

枡野 みんなが生活を犠牲にして、夜中も起きつつ。公開しない掲示板を作って、何か問題があったらそこに書いて、みんなで相談して決めることにして。

篠田 どこで誰が今、何の作業をやってるのかがわかって面白かった。スタッフのチームワークもよくて、この仕事は楽しかったですね。枡野くんはすごく迷うんですよ。「どうしよう」ってさんざん迷っておいて、「ひとりごとです」とかって書いてあって、こっちは、「えーっ? 作業、止めたほうがいいの? どうすればいいの?」って。

あらら 師匠は、短歌を選ぶのもすごく迷うんですよね。僕がわりとせっかちな人間なので、ボツにした作品は、どんどん隠して師匠に見せないようにして。

枡野 そういうふうに、まわりの仲間たちにのせられて、なんとかやってました。

――離婚の件では枡野さんもとても落ち込んだそうですけれど、ちゃ〜んと神様は、代わりに、大切な仲間を授けてくださったんですね!

枡野 そうなんです。あららって離婚歴があって子供いて、という境遇が僕と同じなので、話していると、いろんなことに気付くんですよ。すごく生意気なことを言うんですが、「そうか、元妻も、僕に言われたことで、こんなふうにムカついてたんだ」「じゃあ僕が嫌われても当然だな」って思えるんです。あららは「離婚後の僕にいろんなことを気付かせるために、神様がつかわした天使なんじゃないか」って思えなくもないんですよ。

(取材・文 平林享子/クローバー・ブックス

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【3/12(土)・13(日)】
枡野さんが『かなしーおもちゃ』宣伝のために結成したバンド「啄木」による「金紙&銀紙プレゼンツ かなしーライブツアー」を行ないます。枡野さんも歌います、もちろんトークもたっぷり!
3/12(土) 新宿ロフトプラスワン
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*金紙&銀紙とは、枡野さんとマンガ家の河井克夫さんの顔がそっくりであることに気付いた松尾スズキさんが驚愕のあまりプロデュースしたニセ双子ユニットです。松尾スズキ公式サイト「松尾部」に連載記事あり。

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