インタビュー石原壮一郎--恋愛くらいは暴走してみる。それも大人力

もう「大人」をやめようと思ったこともあった
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――石原さん自身もずっと大人を模索する旅を続けてるんですね(笑)。

石原 『大人養成講座』『大人の女養成講座』が結構評判がよくて、出版界という狭い世界の中では「大人の石原」「養成講座の石原」として知ってもらったわけではあるんですけど、何を書いても自分自身の焼き直しみたいな気がして、「もう、大人モノをやるのはやめようかなあ」だんだん「俺は大人だけじゃないんだぞ!」ってところも見せたいみたいなスケベ心も出てきたりして。「殻をやぶらなきゃ」「脱皮しなきゃ」みたいなプレッシャーはけっこうありましたね。で、違うことも書いてみたんですが、これがわれながら面白くないんですよ(笑)。無難にまとめることはできるんですけど、これは別に僕が書かなくても、誰が書いても同じような記事だなと。そんなこんなやっているうちに、だんだん「大人を避けて通らなくてもいいんじゃないか」、「自分には大人があるじゃないか!」って思うようになってきたんですね。

――当たり役だけじゃなく、もっといろんな役を演じてみたいという、役者としての欲、ジレンマですね。最近で言えば、ペ・ヨンジュンの「『冬ソナ』の呪縛」ですね。イメージ・チェンジに挑戦したけど、やっぱり純愛モノに戻る、みたいな。

石原 ペ・ヨンジュンまで引き合いに出していただいてさらにこの上ない光栄ですけど、ファンの方に怒られそうですね(笑)。一連の大人シリーズのあと、大人を「一人前のビジネスマン」に言い換えてみたり、同じ「大人」でも細部にこだわって別の大人像を模索してみたり、何となく大人から腰が引けてたところがあります。でも、もう避けるのはやめようと、真っ向から大人に取り組んだのが『大人力検定』なんです。

――『大人力検定』の表紙には「元祖&本家」と入ってます。今では「大人」の元祖&本家であると自ら認めてらっしゃる。

石原 ブームに乗っかって出したと思われるのは悔しかったので、いや、そういう側面は否定できませんが(笑)、この路線を見つけたのは僕だと、開き直ったというか。人間そんな、いろんなことはできないし。プロ野球の選手が、別の打ち方をしても打てないですよね。変な打ち方っていわれても、ガニ股打法みたいなのを貫かないと。それはそうと、こうして自分で自分をいろんなものに例えると、非常に思いあがってる感じに聞えそうですよね。大丈夫ですか? とにかく、自分にやれることを追求していくのがいいんじゃないかと。恥じることはないっていうか。恥じちゃいないんですけど、遠慮することはないんだと胸を張ることにしました。だからかどうか、開き直って書いたこの本は、正直、ほかの本に比べて格段にウケがいいんですね。自分でも、今まで出した本の中で、かなりいい線いってるんじゃないかと思います。雑誌、テレビ、新聞、ラジオでも頻繁に取り上げてもらっているのは、なにかこう、人々の心をゆさぶる力があるんじゃないかと(笑)。

――時代が求めている何かがある。

石原 まあ、時代はさておき、僕がライターとして人より秀でいるものは何かというと、大人って言葉を、いろんな方面から遊べるってことだと思うんですよ。読者の義憤に訴える文章や思わずホロリとさせるようなものは、明らかに得意ではない。でも、大人って言葉を使って、400字くらいで、2、3ヶ所笑ってもらうような文章を書くことに関しては、ほかの人より得意だと思う。だったら、その分野を一生懸命やっていくのがいいのかと今は思ってます。もちろん、それだけをやるっていう意味じゃなくて、いろいろやりたいのはやりたいんですよ。

――あと、石原さんは恋愛コメンテイターとしても有名ですね。


石原壮一郎
石原 目指したことは、一度もないんですが(笑)。『大人の女養成講座』以降、女性誌から、恋愛の悩み相談とか、「男心をくすぐる女とは」とかいった原稿の依頼がきたり、コメントを求められるままに答えるようになって、おかげさまでよく出させてもらってます。でもたいていコメントする人が同じ特集の中で3人くらいいて、他の人は「恋してる女性は美しい」とかマジメなことを言ってるんですけど、僕の役割って「まあ、そんなに一生懸命にならなくても」みたいなことを言う役割なんですよね。
恋愛っていうもの自体がそもそも、ウカツなものだと思うんですよ。恋愛って、大事なもの、美しいものとされてて、みんな一生懸命やってますけど、マヌケなものでもある。そのことは誰かが言ってあげたほうがいい。でも、「バカじゃないの」って言っても、面白くないわけですよ。「王様は裸だ」みたいなのを、どうまわりくどくチラつかせるか、っていう楽しさがあります。単に嫌がらで言うわけじゃなくて、読者に楽になってほしい。女性エッセイストが「あなたは素敵よ」って言って、救われる人もいるし、素敵じゃない部分を目の当たりにして救われる人もいるし。読者にとっては、活字を追う苦労の見返りがないといけないわけですよね。
恋愛について語るっていうのは、これはこれで、パズルを解くみたいな気持ちよさがあります。正解がないものだし、いかに読んでる人がなるほどと思うように、言葉を組み合わせながら、漠然としたものに輪郭を与える作業のような気がしているんです。

――大人に対しても、恋愛に対しても、石原さんのスタンスは同じなんですね。

石原 正解はないけど、何か大事なもののように言われているものについて、「王様は裸だ」的な面を浮き彫りにするといいますか。まじめに語ることで救われる人もいるだろうけど、まじめだけじゃないだろうって感じている人もいるわけですから。うすうす感じていることを、わざわざ言わなくてもいいのに、あえて言ってしまう的な喜びがありますね。こうも言えるが、こうも言える、でも正解はみつからない。そういう『大人養成講座』で見つけたアプローチ、自分の使い勝手のいいアプローチを、いろんなものに当てはめてるだけ。

――それが石原さんのコラムニストとしてのスタンスですよね。


石原 政治の不正をただそうとか、苦しんでいる子供を救おうとか、社会の矛盾をあばいて伝えようとか、興味がないわけではないけど、そういう熱く燃えたぎるエネルギーにつきうごかされて、もの書きをしているわけではない。じゃあ何が楽しくってやってるのかというと、斜めから見たり、ひっくりかえしたりして、そのひっくりかえし方を面白がってもらうのが好きなんでしょうね、きっと。自分にとって居心地のいいスタンスを見つけることができたのは、本当に幸運だと思います。って中途半端にきれいにまとめられても困りますよね(笑)。

(取材・文 平林享子/クローバー・ブックス
会社図鑑!2005天の巻
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共に、オバタカズユキ、石原壮一郎/ダイヤモンド社
いろんな業界の現役社員に取材、その本音から会社の真実がわかる。毎年改訂版が出る人気シリーズ。2006年度版も近日発売。

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