インタビュー嶽本野ばら、乙女とはハードボイルドなのです

どこか妙に笑える……自分では無意識なんですが
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嶽本野ばら
『下妻物語』は、「本格的コメディ小説を書いてやるぞ」という意気込みで取りかかりました。とにかく「笑わさないと負けだ」と思っていたので、笑いという部分では真剣勝負で挑みました。

小説を書くときの初期衝動はいろいろです。あるセンテンスが浮かんで、それを生かすための物語を考えることもあれば、『鱗姫』のように「ホラー小説というものを書いてみるのだ!」と、はじめにコンセプトありきでスタートすることもあります。『下妻物語』の場合は、「ヤンキーちゃんとロリータちゃん」というタイトルがある日、頭に浮かんだんです。自分の中でそのタイトルがすっごく可笑しくて。一面に田んぼが広がる田舎の道を全身ロリロリのファッションで決めた女の子が一人で歩いているオープニングの場面だけが最初に頭の中に浮かんで、その映像と合う場所を茨城県に探しに行ったところ、ピッタリだったのが下妻という町だったんです。

書き上げて編集者に提出したら、「タイトルが長すぎる」と言われて。僕のエグゼクティブ・プロデューサである小学館の編集者スガワラが長いタイトルを許してくれないんです。「最近は『冷静と情熱のあいだ』とか『悪魔のパス 天使のゴール』とか長いタイトルがいいんですよ」と言ってみたんですが、「何を出しても売れる作家とは違うんです。あなたはまだそこまで行ってません。もっと短くて一言で伝わるタイトルにしないといけません」と言われ、それはそうだなと思い、いろいろ考えて『下妻物語』にしました。よろめき小説のようなちょっと古風で隠微な響きもあって面白いかなと。でも本当は、僕は長いタイトルが好きなので、「そのうち長いタイトルをつけてやる!」と思っているんですけど。

『下妻物語』で初めて関西弁を使いました。これまでの小説やエッセイでは、わざと関西弁を使わなかったんですね。高村薫さんが以前、大阪を舞台にしたクライムノベルを書くときにリアリティを求めるなら関西弁で書くべきだけど、いざ文章にしてみるとどうしても吉本新喜劇みたいになって緊張感が出ないからしかたなく標準語にしている、というようなことを語ってらっしゃいましたが、僕も同じ理由から関西弁は使わなかったんです。でも『下妻物語』はコメディなので、初めて解禁にしたんです。 ただ、笑いに関しては、ふだんの小説やエッセイでも、「すごくまじめで格調高いことを書いているのに、どこか妙に笑えるところがありますね」ということはよく言われます。自分では無意識なんですが、人を笑わせてしまう何かが僕の中にあるんでしょうね。関西に生まれ育ち、つねにテレビをつければ落語や漫才をやっているという他の都道府県と比較するとある種、異様な環境で育ってきているので、それが作品にも自然に出ているのかもしれないと思うんですけど。作品だけならいいんですが、ふだんの会話でもつい辛辣な冗談を言ってしまうんです。それで人をよく怒らせるというか、半泣きにさせてしまうんですね。関西生まれのせいにしているんですが、実は、関西にいるときから「冗談とはいえヒドすぎる」って言われてたんです。やはり言葉に対するある種のセンスが他の人よりは巧みなわけで、その感覚で冗談を言ってしまうと、傷つけてしまうみたいで。でも、僕もいいかげん大人なので、最近は相手を見て「この人は大丈夫そう」と判断してから言うようにしています。
鱗姫
鱗姫』(嶽本野ばら/小学館) 小栗虫太郎や澁澤龍彦を愛する野ばらさんならではの、伝統的なゴシック・ロマンスの流れをくむロマンチック・ホラー小説。美に殉じる者達を描いた、崇高で耽美で怪奇な世界。なのに、そこはかとないユーモアが漂っていているのも魅力。

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