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マンガばかり読んでるとバカになる
words by スズキトモユ/illustration by kashmir バックナンバー
このマンガ好きだったらこの小説読んでみなよー。この小説が面白いんなら、このマンガ、絶対おすすめ。そんなふうにおもしろい本の世界を倍々でひろげていきます。第24回は○人禁制なマンガと小説を!

第24回 ○人禁制だよ対決!『大奥』vs『後宮小説』

ドラマ『大奥〜華の乱〜』が始まりました。
平成「大奥シリーズ」第3弾となる今回の舞台は、元禄の世。第5代将軍、徳川綱吉と、綱吉を取り巻く大奥の女たちの愛憎が描かれます。

将軍・綱吉といえば「生類憐みの令」で世に知られています。
儒学を重んじ、湯島聖堂を建てたりと、クレバーなところを見せる反面、「お犬様を殺した者は厳罰に処すのだ!」と、世迷いごととしか思えない天下の悪法を発布、江戸の民を苦しめたとして、後世に於ける綱吉の政治的評価はけして高いものではありません。

『大奥〜華の乱〜』における綱吉(谷原章介)もかなりたいそうな御仁。マザコンがゆえか、側用人・牧野成貞の奥方をむりやりモノにするわ、親子丼食べたい! と、お次はその娘(夫アリ)を側室に差し出すよう無理難題吹っかけるわ、まさに鬼畜の所業であります。
挙句、側用人の奥さんは自害しちゃって、娘・安子(内山理名)は「復讐」を誓い、大奥に乗り込む……というのがイントロダクションのようであります。
綱吉側室・お伝の方(小池栄子)、綱吉の正室・信子(藤原紀香)らも絡んで、すごくドロドロしそう。恐ろしいですね。

ところで、狂気の迷君・綱吉については近年、評価の見直しがされているようです。『黄門さまと犬公方』(山室恭子/文春新書)では、「『生類憐みの令』は未だ残る戦国時代の荒々しい気風を一掃するために出した法であり、それほど厳密に適用されたものではなかった」と推測しています。あまりにバカバカしすぎた為、当時の戯作者にネタとして使われ、エスカレートして伝えられてしまった、というのが本当のところなのかもしれません。

『大奥』よしながふみ(1巻〜)/白泉社ジェッツコミックス

さて、よしながふみ『大奥』。
第6回で『フラワー・オブ・ライフ』とりあげたこと完全に忘れていて、2回目の登板となります。まあいいや、おもしろいから。

村の小童、定吉が熊に襲われ、息を引き取った。
村人たちは悲しみに暮れたが、それはこの国を根底から揺るがす未曾有の災厄のほんの始まりに過ぎなかった。
定吉の村から蔓延した伝染性の疫病はまたたくまに日本を覆いつくしていく。若い男性のみがかかり、発症すれば、ほとんど助からないこの「赤面疱瘡」の治療法は見つからず、男子の人口は女子の四分の一で安定する。
男女比の不均衡に伴って社会構造も大きく変化する。女は労働力の担い手となることを余儀なくされ、子孫を残すための種付けが男の重要な役割となる。婿取りは武家や裕福な商人など、一部の階級にのみ許された特権的なものとなる。

そして、将軍は女に、大奥には三千人の美男子がずらり。

うーむ、なんと。
「織田信長は本能寺で死ななかった」など、歴史に対するifを扱った作品は幾つもありますが、これほど大胆なものはなかなかありません。単行本オビに「SF大河ロマン」と銘打たれてますが、たしかにそうかも。
この第1巻では、貧乏旗本に生まれて大奥奉公を志願する気風のいい江戸っ子・祐之進を主人公に、美男三千人がお仕えするという女人禁制の男の城「大奥」を内側から描き出しております。
華やかに見えてもどこか昏い影のある美男子(一部例外有り)の愛憎劇を描かせたら、さすがはよしながふみ、お手の物です。
幕府の金喰い虫「大奥」に改革をもたらさんとする新将軍・吉宗の男ぶり(でも女)も気持ちよく、たいへんよろしゅうございます。六代将軍・家宣の貫禄に心奪われてしまったのはヒミツですよ!

2巻への引きも強烈で、さて、これからどうなるんでしょうか?

『後宮小説』酒見賢一/新潮文庫

こんどは小説。
もうひとつの「大奥」を描いた、酒見賢一『後宮小説』をとりあげましょう。
舞台は、中国王朝を彷彿とさせるもののあくまで架空の王朝である素乾国。「腹上死であったと、記載されている」なる、人を食った一文から幕を開ける「後宮」ファンタジーであります。

房事の最中に急死した先帝の後を継いだのは若干17歳の槐宗でした。若き新帝のための後宮を作らねば、と宮女募集の高札が立ち、国中にスカウトが派遣されます。それにホイホイついてったのが田舎娘の銀河。「後宮=いい服が着れて、三食昼寝つきで贅沢三昧できる」くらいしか認識してない十四歳のおぼこ娘で、この物語の主人公です。

『後宮小説』なるタイトルどおり「後宮」がこの作品の要。この作品における「後宮」とは「子宮」を意味します。
国家は女体であり、後宮はその子宮であるという「後宮子宮説」なる哲学が語られ、実際、素乾国の後宮と外界を結ぶのは、「たると(垂戸)」と呼ばれる女性器を模したトンネルです。なんと、馬鹿馬鹿しくも素晴らしい設定でしょう! 

後宮の学校である女大学では、礼儀作法のみならず、房中術つまり性技術に関する講義も行われます。
よく考えてみると、セックス、セックス、セックスですが、そういうお話につきものの卑猥さ、後ろ暗さは微塵も感じられません。たぶんそれは、あっけらかんとして物怖じしない銀河の性格、そしてそんな銀河たちを軽やかに描く酒見賢一の筆の冴えでしょう。この人の書くものには品があるのです。

ところでこの作品、スタジオぴえろ製作により『雲のように風のように』のタイトルでアニメ化されていますが、性にまつわる哲学など割愛されている要素が多く、『後宮小説』かといえば、また別の作品という印象です。ぜひ小説を読んでみてください。

「大奥」に「後宮」。普通人であるわれわれが目にすることができない禁断の世界にはやはり言い知れない魅力があるのかもしれませんね!

本の妖精トモトモ

(文・スズキトモユ/見下げはてな 絵・kashmir/lowlife

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