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マンガばかり読んでるとバカになる
words by スズキトモユ/illustration by kashmir バックナンバー
※今回より連載曜日が水曜「萌え発想術」と入れ替えになりました。
このマンガ好きだったらこの小説読んでみなよー。この小説が面白いんなら、このマンガ、絶対おすすめ。そんなふうにおもしろい本の世界を倍々でひろげていきます。第13回は、夏休みといえば昆虫採集(ほんとかいな)な、ムシムシ大行進マンガと小説を!

第13回 夏だ! 休みだ! ムシの季節だ!――古賀亮一『新ゲノム』

『甲虫王者ムシキング』、大ブームです。
『甲虫王者ムシキング』とは、手持ちのカードをスキャンさせることで、世界中の甲虫を戦わせることができるカードバトルゲーム。レアな「ムシカード」を集める楽しみ、「わざカード」の組み合わせにより多彩な戦略が楽しめる奥深さにより、爆発的なヒットとなりました。夏休み真っ只中、そこらを駆けていく男の子は、手持ちのカードを握りしめてゲームセンターに向かうムシキング大好きっ子なのかもしれません。
アニメに、マンガに、映画にと、ムシキングの世界はどんどんと広がっていきますが、ここで注目したいのは、ムシキングオモチャの中でも、いちばんの衝撃作、『ムシキング RCバトル』シリーズでしょう。やたらリアルなカブトムシ、コーカサスオオカブト、タランドゥスツヤクワガタ、マンディブラリスフタマタクワガタ(長い!)が、ラジコンで動く! バトルできる!

『ムシキング RCバトル カブトムシ』セガトイズ
飼ってるカブトムシが動かなくなった小学生が、「ママ、電池切れちゃった。入れ替えて」と母親に頼んだというお話がありますが、艶やかなキチン質、わきゃわきゃとした動き、カブトムシもクワガタも、どう考えてもオモチャっぽいわけで、ならば電池交換しようと考えるほうが自然な発想なのかもしれません。つまり、この『ムシキング RCバトル』シリーズ、本当に電池交換できるカブトムシを作ってしまったわけで、なんだかすごい時代になったものでした。
ところで、真に生命の大切さを考えるのならば、本物のカブトムシをバトルさせないで、こちらで遊んだほうがいいのかも。昆虫や動物の死に直面しないと、生命の大切さは学べない、とかそんなことほざく人もたまにいるんだけど。

さて、マンガ。小学館の『小学一年生』から『コロコロコミック』まで、ムシキングマンガは幅広く連載されてますが、今回はあえて、もうひとつのムシキングというべき、古賀亮一『新ゲノム』を紹介しましょー。反論は全却下しますよ。

『新ゲノム』古賀亮一(1巻〜)/メガストアコミックス

『ニニンがシノブ伝』のアニメ化で全国各地のお茶の間でおなじみとなった古賀亮一作品。どんな局所的なお茶の間だよ、という話もありますが、とにかくいやらしいかわいらしいその絵柄、誰にも真似できない超絶的なセリフ運び、中学生男子っぽい素朴でほのぼのダメテイストなど、その独特の作風は唯一無二、まさに天才の仕事であります。
『ニニンがシノブ伝』に並ぶ、古賀亮一、もうひとつの代表作がこの『新ゲノム』。「新」となったのは掲載誌の移動があったからで、内容はぜんぜん変わってません。ちなみに『ゲノム』はビブロスカラフルコミックスより全4巻発売中です。
「ワルイコの学習マンガ」と題されたこの『新ゲノム』。その内容を一言で説明するのはなかなか至難の業。パクマンさん(こんなの)が、いやらしくもわけのわからないことをいう → エルフのエルエルに特異なデザインの虫スーツをムリヤリ着せる → 羞恥に悶えるエルエルの表情をしばし鑑賞 → ナメクジのなっちゃん、エルエル幼馴染みのダクエルら、百合っ気マンマンなかたがたがエルエルにアプローチ → パクマンさんがいやらしくもわけのわからないことをいう。あれ? けっこう簡単でした!
ところで、

あー、怒られた怒られた まったくうるさい女達だわね!!
おっぱいを見たり聞いたり訪ね歩いたり… 男ってのは常にロマンを求めて生きてんだ!!

などと、不謹慎極まるセリフを繰り出しまくる天然問題児・パクマンさんが拒絶されることなく、当たり前に受け入れられているのは特筆に価します。心地よい読後感は、そこに起因しているのでしょう。ここには、愛があるよ! ということで、ある意味、この作品はパラダイスマンガなのだと思うのでした。うーむ、うらやましい。
「アメリカシロヒトリ」、「ミズスマシ」、「毛虫」、「アワビ」、「イカ」、「シャコ」と、虫マンガとしてもばっちり! でもなかった! (既刊4巻でネタが尽きたようです)虫ネタが読みたいかたは『ゲノム』から読むべし!

気を取り直して、虫ネタ、虫ネタ。ブライアン・W・オールディス『地球の長い午後』を紹介しましょう。

『地球の長い午後』ブライアン・W・オールディス/訳:伊藤典夫/ハヤカワ文庫SF

――遥かな未来。地球は自転を止め、太陽にその面を向けた昼の半球は、植物に覆い尽くされた温室と化した。増大する放射線に炙られて、植物は進化していった。ほとんどの動物は滅び、わずかに生き残った人類は、跋扈する食肉植物の影に怯えながら、森の中で細々と暮らしていた。そんな人類にとっての救済は、植物蜘蛛・ツナワタリにその身を乗せて、魂を月に運ぶことだった。

あれれ、これも植物でした。しかし、この地球最大の生物・ツナワタリは非常に印象的です。

ほかにも、何匹かのツナワタリが、近くに身じろぎもせずにうかんでいる。ときどき、そのうちの一匹が酸素の球を吹いたり、足を動かして、わずらわしい寄生生物をふりおとそうとしたりしている。彼らほど、のんびりした生物も、また、ない。彼らにとって、時は存在しないのだ。太陽は彼らのものであり、その状態は、将来太陽の活動が不安定となり、新星と化して、彼らを、そしてみずからを焼き尽くす日まで変ることはあるまい。
(中略)速度も増大していた。ツナワタリは脚を折りたたむと、尻の出糸突起から新鮮な糸を放出しはじめた。感覚すらほとんど持たないその巨大な植物は、体温を一定に保つため、ゆっくりと自転しながら黒の空間を飛行した。
強烈な放射線がその体を洗った。ツナワタリはそれに身をゆだねた。それが、この生物の栄養なのだった。

天敵・トラバチから逃れるために、キロ単位の大きさを誇る巨大植物・ツナワタリは地球から月へと、自らの糸を張って移動します。救済を求める人類は、集光植物・ヒツボのガラス状の莢に潜り込んで、ツナワタリとともに月に昇るのです。なんと、ロマンティックな光景でしょう! ものすごいのはツナワタリだけではありません。ツチスイドリ、ジゴクヤナギ、フウセンイブクロなどなど、奇怪な植物から、トラバチ、ハガネシロアリなど昆虫、そして異形の人類たち。登場する生物すべてが強烈な印象を残します。SF的想像力とは、こういうものなのでしょう。

あれれれ、意外と虫じゃなかったよ、な2冊ですが、どっちも素晴らしい傑作なので、まあよいよいということで。おしまい。

本の妖精トモトモ

(文・スズキトモユ/見下げはてな 絵・kashmir/lowlife

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