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words by 矢部智子 バックナンバー
街中にある本棚を探すさすらいの連載。今回は京都にやってきました。狭く急な階段をあがると、不思議空間が広がっていて……。

第5回 不思議の国の絵本カフェ 京都 ミハス・ピトゥー(前編)

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カフェブームと絵本人気の相乗効果で、「絵本の読めるカフェ」は、今ではけっしてめずらしいものではなくなったのだけど、それでも「ミハス・ピトゥー」に初めて訪れたときは、不思議の国に迷いこんだアリスの気分で「うわあ……」と声をあげてしまった。

狭く急な階段をあがった2階には、アンティークのテーブルや椅子がならび、棚やテーブルなどあちこちに置かれた絵本を、ランプの灯りがほんのり照らし出す。『エルマーとりゅう』『ながぐつをはいたねこ』『ちいさいおうち』……ノスタルジックなその風景は、そのまま絵本のなかの一場面のようだ。

「ミハス・ピトゥー」は、京都の祇園にあるセレクト雑貨店。古い一軒家を改装した店内は、1階には国内外のかわいらしい雑貨がならび、2階は約200冊の絵本が読めるカフェになっている。雑貨好きの女の子が訪れたら、気絶するんじゃないかと思うくらい「かわいいもの」がぎっしりつまったこの店。オーナーは雑貨好きの女性? それとも絵本作家志望の男性? ……そう勝手に想像していたら、あらわれたのは「爽やか」を絵に描いたような好青年だった。

オーナーの原田裕一さんは28才。この店をはじめる前は、ドラッグストアで働いていたそうだ。以前に雑貨店で働いていた経験から、貯めたお金で店を開くことを決意。2003年5月に、「ミハス・ピトゥー」をオープンした。

「雑貨や絵本についてなんの詳しい知識もないし、従来の枠とかも知らない。ごく普通の人間」と、自分について語る原田さん。「好きなものを集めていたらこんなふうになった、それがそのままの気持ちなんです(笑)」

そう聞いて改めて店内を見ると、たしかに、ヨーロッパのおみやげ屋さんにありそうなグッズのとなりに、人気クリエイターのデザイン雑貨が並んでいたりする。2階の絵本も同様。つい最近刊行された話題の絵本と、昔からある素朴なタッチの絵本――たぶんその道の「プロ」だったら、きっちり分類したくなるであろう絵本が、ここではなんの気負いもなく同居しているのだ。

「ふつうお店って、シンプルとかアンティークとか、決まった路線があると思うんです。でも僕は、ポップなものもシブいものも好きで、『これ』とひとつに言い切れない。そのいろんな思いを、この店でそのまま放出しているんです。だからカオスなんですよ。でも、そのワケのわからないところが、お客さんには受けている気がします。『あの店長、次は何置くかわからへんで』って(笑)』

予備知識のないところからスタートした店主の思いは、ややもすると「押しつけ」や「閉塞感」につながってしまう。でもそうなることなく、訪れる人を魅了しているのは、原田さんの絶妙なバランス感覚ゆえんだろう。

「××系」なんて言葉でひとつにくくれないこの店の本棚を見ていると、忘れていた「絵本」の魅力に気づかされる。「定番」とか「人気」とかいろんな知識がつく前の、子どものときはじめて出会ったころの、「絵本」の魅力に。
(文・矢部智子)



ミハス・ピトゥー
京都市東山区東大路安井上ル月見町6
tel 075-533-1010
open 12:30〜20:00
不定休

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