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マンガばかり読んでるとバカになる
words by スズキトモユ/illustration by kashmir バックナンバー
このマンガ好きだったらこの小説読んでみなよー。この小説が面白いんなら、このマンガ、絶対おすすめ。そんなふうにおもしろい本の世界を倍々でひろげていきます。第6回は、ありそうでない学園マンガと小説を!

第6回 お花畑の子供たち ――よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』

学園を舞台にした作品は世に尽きません。読者の皆さんが体験している、あるいは、体験した世界を扱っているわけで、ジャンル的な隆盛は当然だといえましょう。
では、と、「学園の現在」で「衝撃のリアル」な作品を手にとってしまうとさあたいへん。サイコパスと化した娘さんの執拗な虐めが炸裂するほとんどホラーマンガだったり、全員拳がボロボロなのがたいへん気になる、ウスバカゲロウのように儚いヤンキーさん生態マンガだったり、とにかくただごとではなさすぎます。こんな学園に入学したら生きて卒業できるかもわかりませぬ。生存率はいかほどなのでしょうか。つい気になって読んじゃいますけど、「学園の現在」「衝撃のリアル」ばかりじゃ、さすがに心がささくれます。

もっと、お気楽なのがいいよ!

『フラワー・オブ・ライフ』よしながふみ(2巻〜)/新書館

そんなあなたにオススメなのが、よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』。ほとんど中学生日記みたいにほわほわしたハイスクール・ライフが味わえまする。
物語の幕は、1年D組の教室にひと月遅れの新入生がやってくるところから開きます。
彼の名前は花園春太郎。金髪で背丈も高くて性格も超ポジティブそう。しかし、そんな彼の落とした爆弾により、ざわつく教室は静まりかえります。

「俺、白血病でした!」

うわー、強烈。そのうえ、闘病生活のせいで実際には1年年上。悲劇の年上クラスメイト登場で、もう、みなさん仲良くせざるを得ません。
悲劇の少年である花園春太郎くんは、自分が爆弾を落としたことにも気づかないくらい単純お馬鹿でお子様だったのでした。
そしてお馬鹿がもう一人。長身痩躯に大人びた風貌、そして秀才メガネ。普通に生徒会長してそうなルックスの真島は傍若無人な最凶オタク。持てる才能すべてを女性向けやら男性向けやらの同人その他に注ぎ込んで頭が悪くなったという、いっそすがすがしいほどの御仁であります。
プラス、ぷに系マスコットキャラな三国くん、見た目オカマな女教師・斉藤センセの4人が中心となって、あーだこーだ、というお話であります。
これで、ほわほわ? ええ、ほわほわです。ほわほわですとも。ちょっとの痛みは隠し味!
花園くんの設定もそうですが、よしながふみはどこかにハンディキャップを抱えたり、社会的にマイノリティだったりする人間を描いて、悲劇的になりすぎない、へんてこで心なごむ物語を紡ぐのに長けた作家です。それは『西洋骨董洋菓子店』(全4巻)あたりの既刊でも実証済みでしょう。

学園ものというジャンルの中には、「学園ユートピア」なる括りで語れるものがある気がして、ここでいう「ユートピア」とはトマス・モアが同名作品で用いた「どこにもない国」と同じ意味です。
つまり、学園ユートピア作品とは、「ありそうなんだけど、現実にはなさそうな学園」を扱った作品であります。代表例としては、佐々木倫子『動物のお医者さん』とか、そんな感じです。
『動物のお医者さん』の北大獣医学部と同様、この『フラワー・オブ・ライフ』の高校も、ありそうでない一種のユートピアとして成立していることはまちがいありません。
学園祭に突入の2巻でそのユートピアレベルは急上昇。ネタバラシになるんで、どんな娘さんかは秘密ですが、新キャラの武田さんがいいんですよ、これが。

『荒野の恋 第一部』桜庭一樹/エンターブレイン

さて、こんどは小説。桜庭一樹『荒野の恋 第一部 catch the tail』を紹介しましょう。
主人公の名前は山之内荒野。鎌倉在住、十二歳、紺のセーラー服も着慣れない、入りたてほやほやの中学生です。
『荒野の恋』とは、ウエスタンなラブストーリーではなく、まだまだ大人以前な荒野さんの恋愛をめぐる物語なのでした。
”恋の三部作”第一部のこの巻は、「恋のしっぽ」らしきものを見つけた十二歳の荒野さんがつたない足取りでととと、と追いかけていく物語だそうです。
荒野さんが見つけるのは恋みたいなものだけではありません。小学生だった自分には見えなかったこと、気づかなかったことを発見していく物語です。
五木寛之『青年は荒野をめざす』を手に登場するもうひとりの主人公、彼女の同級生にして、……な、神無月悠也と荒野さんがともに眼鏡をかけているのは何やら象徴的に思えます。神無月くんはどこか遠くを見ようと欲し、荒野さんは自分の周囲を見つめることで、世界の秘密を知るのでした。
桜庭一樹は「ありそうでない」どころか「ありえない」設定で思春期のぐるぐるした心の動きなどを描き続けてきた作家です。『推定少女』『赤×ピンク』『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』、すべてそうです。
では、荒野さんの恋を描いた、この『荒野の恋』が「ありえる」のかといえば、そうでもありません。ここに描かれるのはやはり「ありそうでない」少女の恋愛でしょう。しかし、「ありそうでない」からこそ鮮烈に描けるものもあるのではないかと思います。それは、『フラワー・オブ・ライフ』も同じです。

そして、そのようなものを読むことこそが、フィクションの醍醐味ではないかと思うのです。
リアル反対! と書いて、今回は終わり。

本の妖精トモトモ

(文・スズキトモユ/見下げはてな 絵・kashmir/lowlife

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