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マンガばかり読んでるとバカになる
words by スズキトモユ/illustration by kashmir バックナンバー
このマンガ好きだったらこの小説読んでみなよー。この小説が面白いんなら、このマンガ、絶対おすすめ。そんなふうにおもしろい本の世界を倍々でひろげていきます。第3回は戦う犬ちゃんマンガと小説を!

第3回 戦いの最前線に犬たちがいる――高橋よしひろ『銀牙伝説ウィード』

シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』に、「皆殺しの雄叫びをあげ 戦いの犬を野に放て」という一節があります。傭兵部隊の活躍を描いたフレデリック・フォーサイス『戦争の犬たち』なんて作品もあります。
世間一般におけるイヌたちのイメージを考えてみましょう。「命令に従順」、「集団社会を形成」、「恐れを知らず勇敢」。なるほど、たしかに軍人にぴったり。軍用犬はいても軍用猫がいないのはその気質によるものがあると思われます。
で、今回のお題は「犬」。愛玩の対象ではなく、戦う犬たちについてとりあげてみました。

『銀牙伝説ウィード』高橋よしひろ(33巻〜)/日本文芸社

『銀牙伝説ウィード』。奥羽の犬たちを治める伝説の総大将・銀とヒロイン・桜のあいだにできた子犬を主人公に描く、名作『銀牙 流れ星 銀』の続編です。
主人公のウィードは世間のことを何も知らない、ほんの坊やです。ウィード(雑草)という名前からもわかるように、親の七光りを受けて育ったわけではありません。桜はシングルマザーとしてウィードを育てたのでした。そして、桜の死を契機にウィードは、まだ見ぬ父・銀を求めて長い旅を始めるのでした。
ウィードの武器は、持ち前の勇気と俊敏な動き、そして「奥羽の総大将・銀の血を引いている(らしい)」というツラ構えです。「ヤツの息子ならば信じられる」わけです。銀とともに人喰い熊・赤カブトと闘った前作キャラたちも再登場しますし、『キン肉マン2世』における、ケビン・マスクみたいな二世キャラも出てきます。ウィードのもとに集う仲間たちの数はどんどん増えていきます。
さて、悪の犬たちとの戦いにあけくれるウィードたちですが、彼らは「戦争のプロ」とはちょっとちがう気がします。悪の大ボス・法玄とのバトルは抗争であって、戦争ではありません。
「命令に従順」を「義理人情に厚い」に、「集団社会を形成」を「志を同じくした仲間たちが集う」に、「恐れを知らず勇敢」を「死をも辞さない」と読みかえればよさそうですが、そう、この作品はもうひとつの「戦争のプロ」ヤクザ漫画の変奏なのでした。
鬼畜な手段をもって犬社会の頂点にのし上がってきた新興ヤクザ組織・法玄組と、伝説の組の跡目を継ぐ若き任侠・ウィード率いる組の一大抗争ものだと思って読めばわかりやすいです。
ヤクザ漫画だけあって、犬(おとこ)たちの台詞がアツい!

誰が後悔だと!? 正義を貫く者に後悔などないわ!

正義の魂は 決して途絶える ことはない 見よ 我々は 心ある者の中に 生き続けていくのだ 永久に……

抜刀牙(ばっとうが)なるものすごい必殺技を開発してみたり、吹雪の奥羽山中にウン百匹単位で全国から集結してみたり、ラスボスはほとんど人喰い熊レベルで強かったり、本当にキミらは犬ですか。
そして、犬同士の抗争に決着がついたと思ったら、こんどは猿と戦ってみたりするわけです。猿の虐殺をやめるよう別の犬組織に進言したウィードに対する返答がこれ。

心配するな うまい肉のほとんどは 猿肉だ あの仔猿の両親の肉も お前らに喰わせた

猿肉を喰っといて 何が今更 猿を助けるだよ ははは このトンマめ 本当に知らなかったのか−−っ

血生臭い話になってまいりました。しかし、犬と猿が共通言語なのか。
なぜだか日本にいるアルビノのゲラダヒヒ・将軍が、仔犬を喰ったり仔犬も喰ったりしながらニホンザルを恐怖支配しているという驚愕の展開で、人に近い猿がばりばりむさぼり喰われたりして、ずいぶんなホラーテイスト。斧を片手に猿たちが襲いかかってくるのも怖い。「犬猿の仲」ということわざがありますが、まさか、こんな地獄絵図だとは。びっくりです。

『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男/文芸春秋

古川日出男の新作『ベルカ、吠えないのか?』は、4頭の犬から始まる「戦争の世紀」。犬たちの物語は北太平洋に浮かぶキスカ島から始まります。
「北」「正勇」「勝」「エクスプロージョン」。4匹の軍用犬は、日本軍の全面撤退により、無人となった島に取り残されます。上陸した米軍によって彼らは保護され、そして、彼らの子孫は世界中に散っていきます。
大戦は幕を閉じても、犬たちの戦いは終わりません。
1957年、一頭のライカ犬が、スプートニク2号に乗せられて宇宙へ旅立ち、そして帰還することはありませんでした。時は冷戦下、アメリカに先んじ、ソ連の国力を世界に誇示しようという最高指導者フルシチョフの思惑による計画でした。犬たちはつねに戦いの最前線に駆り出されるのです。
もうひとつの物語である、戦闘兵器として犬を訓練する老人と彼の人質となった日本ヤクザの娘、そして犬たちのパートもカッコいい。

愛玩犬も可愛らしいけど、やはり犬たちは戦ってこそ美しい、と思うのでした。

本の妖精トモトモ

(文・スズキトモユ/見下げはてな 絵・kashmir/lowlife

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